
こんにちは。レザーソールズ:ローファー・革靴・スリッポン選び方ガイドです。
長く履き込んだ愛用の革靴、気づけばつま先の色が剥げていたり、全体的に黒色が色あせて茶色っぽくなっていたりしませんか。
修理店に出すと数千円かかってしまう修理代を節約するために、身近なダイソーやセリア、キャンドゥといった100均ショップのグッズを使って、自分で黒染めや補修ができないかと考える方は非常に多いです。
実際に100均には靴クリームや補修ペン、さらにはアクリル絵の具など、革靴のメンテナンスに使えそうなアイテムがたくさん並んでいます。
しかし、革専用ではないマジックペンを使って失敗してしまったり、用途に合わないクリームを塗って逆に靴を傷めてしまうケースも少なくありません。
この記事では、100均アイテムを使った革靴の黒染めや傷の補修に関する正しい知識と、失敗しないための具体的な手順について解説していきます。
革靴の黒染めを100均グッズで行う際の基礎知識

「100均で革靴を直す」といっても、実は大きく分けて3つのアプローチがあります。それは「補色(色あせを直す)」「隠蔽(傷を隠す)」そして「塗装(色を変える)」です。
それぞれの目的に適したアイテムは異なり、ダイソー、セリア、キャンドゥの各社で手に入るものが違います。まずは各ショップの得意分野と、やってはいけないNG行為について理解しておきましょう。
ダイソーの靴クリームで色落ち補修
ダイソーはシューケア用品のラインナップが非常に豊富で、特に「靴クリーム」に関しては、黒だけでなく茶色や無色(ナチュラル)など複数のバリエーションを展開しており、100円ショップとは思えない充実ぶりを見せています。
これらのクリームは、主にチューブ入りや小さな瓶、あるいは缶入りで販売されており、その成分構成は専門メーカーの製品に迫るものがあります。
ダイソーで販売されている乳化性靴クリームの主な成分は、「ろう(ワックス)」、「油脂」、「有機溶剤」、そして「水」です。これらは一般的な高級靴クリームと基本的な構成要素は同じです。
「ろう」は革の表面に薄い被膜を作り、光沢と防水性を与える役割を果たします。「油脂」は革の繊維内部に浸透し、柔軟性を保つために不可欠な栄養源となります。
そして「有機溶剤」はこれらの成分を溶かし込み、革への浸透を助ける役割を担っています。実際に使用してみると、石油系の溶剤の香りがやや強い傾向にありますが、使用感としては十分に実用的であり、日常的なメンテナンスにおいて大きな問題になることは稀です。
このダイソー製クリームが最も力を発揮するのは、「全体的な色あせの補修(リカバリー)」です。革靴は履き続けるうちに、摩擦や紫外線、乾燥によって染料が抜け、黒色が徐々にグレーや茶色っぽく退色していきます。
こうした状態の靴にダイソーの黒色クリームを塗り込むと、微細な顔料が革の表面の凹凸や毛穴に入り込み、失われた黒さを補ってくれます。同時に油分が補給されることで、革本来のしっとりとした質感が戻り、光の反射が変わることでより黒く、美しく見えるようになります。
しかし、ここで理解しておかなければならない重要な「限界」があります。それは、これらのクリームがあくまで「保革」と「補色」を目的としたものであり、「染色(Dyeing)」をする力は持っていないという点です。
靴クリームに含まれる色素は、革の繊維の奥深くまで染め変えるほど強力ではありません。したがって、「茶色の靴を真っ黒に染め変えたい」というカラーチェンジの目的で靴クリームを厚塗りしても、表面がベタつくだけで、期待するような真っ黒な仕上がりにはなりません。
また、強い摩擦が加わると衣服に色が移りやすくなるため、用途を正しく理解して使用することが重要です。
ここがポイント
ダイソーの靴クリームは「色を乗せる」ものであり、「色を変える」ものではありません。日常的なケアや軽度の色あせには最適ですが、劇的なカラーチェンジを望む場合は、後述するアクリル絵の具や専用の染料が必要になります。
セリアのアクリル絵の具で染色
もしあなたが、茶色の靴を黒くしたい、あるいは色が完全に剥げてしまった部分をしっかり塗りつぶしたいと考えているなら、セリアで販売されている「アクリル絵の具」が最も適した選択肢となります。
これは厳密には革を「染める(Dye)」のではなく、革の表面に柔軟で強靭なプラスチックの膜を作って色を乗せる「塗装(Paint)」に近い手法です。
アクリル絵の具は、アクリル樹脂のエマルジョンに顔料を分散させたもので、乾燥すると耐水性を持つという特性があります。この「耐水性」と「柔軟性」こそが、革靴の補修においてアクリル絵の具が重宝される最大の理由です。
水彩絵の具やポスターカラーとは異なり、一度乾いてしまえば雨に濡れても溶け出すことはありません。
また、乾燥後の塗膜はゴムのようにある程度の伸縮性を持つため、歩行時に大きく屈曲する革靴のアッパー(甲)部分に使用しても、すぐにはひび割れ(クラック)を起こさずに追従してくれます。
セリアは特にDIYやハンドメイド素材のラインナップが充実しており、アクリル絵の具だけでなく、塗装に必要な周辺道具を一式揃えることができるのが強みです。
例えば、広い面を塗るための「平筆」、細かい傷やコバ(靴底の側面)を塗るための「細筆」、絵の具を出す「パレット」、そして仕上げに不可欠な「水性ニス」や「デコパージュ液」などです。
これらを組み合わせることで、単なる補色を超えた、本格的な「靴のカラーチェンジ」や「リペア」が可能になります。
ただし、アクリル絵の具による塗装は、革本来の風合いである「毛穴(ポア)」を埋めてしまう行為でもあります。そのため、通気性は低下し、革独特の自然なムラ感やエイジング(経年変化)は失われてしまいます。
仕上がりは均一でマットな黒色になりやすく、どちらかと言えば「ガラスレザー」や「合成皮革」のような質感に近づくと考えてください。
この特性を理解した上で、「もう履けないと諦めていた靴を、見た目重視で蘇らせたい」という場合には、セリアのアクリル絵の具は最強のコストパフォーマンスを発揮するツールとなるでしょう。
キャンドゥ等のペンで傷を補修
つま先を階段にぶつけて革がめくれてしまった、あるいは砂利で擦れて白い下地が見えてしまった、といった「局所的な物理ダメージ」には、キャンドゥなどで手に入るペンタイプの補修材が圧倒的に便利です。
靴全体を塗る必要はなく、傷ついた部分だけをピンポイントで隠したい場合、わざわざ筆やパレットを用意するのは手間がかかります。その点、ペンタイプならキャップを開けて塗るだけで作業が完結します。
特にキャンドゥで取り扱いのある「キズカクース」のような靴補修特化型の製品は、一般的な文房具の油性ペンとはインクの成分設計が根本的に異なります。
これらの補修ペンには、革への定着力を高めるための特殊な溶剤や、塗膜を強化して剥がれにくくする成分(樹脂など)が配合されています。また、色の濃度も非常に濃く調整されており、一度塗るだけで下地の明るい色をしっかりと隠蔽(カバー)する力を持っています。
使い方のコツとしては、傷口からはみ出さないように慎重に塗布し、乾燥後に指や布で軽く馴染ませることです。深い傷の場合は、一度塗って乾かし、再度塗るという「重ね塗り」を行うことで、傷の凹みをある程度目立たなくする効果も期待できます。
ただし、あくまで「色の補修」であり、めくれ上がった革を接着したり、深い穴を埋めたりするパテのような効果はありません。革がめくれている場合は、先に接着剤で貼り合わせてから、仕上げとしてこの補修ペンを使用するのが正解です。
選び方のコツ
100均には「靴用」ではない普通の油性ペンも多数売られていますが、必ずパッケージに「靴用」「皮革用」「補修」といった文言が記載されているものを選んでください。専用品以外を使うと、後述する変色トラブルの原因となります。
マジックで塗ると失敗する理由

100均で黒染めをしようと考えたとき、多くの人が手軽さゆえにやってしまいがちな最大の失敗が、文房具コーナーにある一般的な「油性マーカー(マジック)」で塗ってしまうことです。
これは、プロの視点からも、経験者の視点からも、絶対におすすめできないNG行為です。
なぜマジックで塗ってはいけないのでしょうか。その最大の理由は、黒インクの「成分」にあります。
実は、市販されている油性マーカーの黒インクの多くは、純粋な黒色の顔料ではなく、「濃い紫色」や「濃い赤色」、あるいは「濃い青色」の染料をベースに調合されて作られています。
白い紙に書いたときは黒く見えますが、革という異なる素材の上に乗せ、太陽光などの強い光の下で見ると、塗った部分だけが不自然に赤紫色や青紫色に反射して見えることがあります。
これを専門用語や愛好家の間では「赤光り(あかびかり)」と呼びます。
さらに厄介なのは、この「赤光り」現象が、塗った直後ではなく、数日後や数週間後に発生することが多いという点です。
インクに含まれる揮発成分が飛んだり、紫外線によって一部の色素が分解されたりすることで、隠れていたベースの色が浮き出てくるのです。一度革の繊維に染み込んでしまった油性マーカーのインクを除去するのは極めて困難です。
除光液やシンナーで落とそうとしても、インクが溶けて広がってしまい、かえって傷口を広げて汚くしてしまうケースが後を絶ちません。
大切な靴を台無しにしないためにも、文房具のマジックを使うのは避け、必ず前述した「靴専用の補修クリーム」や「アクリル絵の具」を使用するようにしてください。
色落ちには乳化性クリーム推奨

革靴の黒色が薄くなり、色あせて見える原因の多くは、単なる色素の脱落だけではありません。革自体の「乾燥」と「油分不足」によって表面が荒れ、光が乱反射することで白っぽく見えているケースが非常に多いのです。
この状態の靴に対して、単に上から色を塗りつぶすだけのケア(塗装)を行うのは、革の寿命を縮めることになりかねません。
そこで推奨されるのが、100均製品を選ぶ際も、できるだけ「乳化性」と表記されたクリームを選ぶことです。
乳化性クリームとは、水と油とろう(ワックス)を乳化剤で混ぜ合わせたもので、人間の肌で言えば「保湿乳液」のような役割を果たします。水分が革に浸透して潤いを与え、油分が繊維をコーティングして柔軟性を保ち、ろうが表面を保護して艶を出します。
ダイソーなどの100円ショップでも、チューブ入りの靴クリームの多くは乳化性です。これを使ってケアすることで、色を補う(補色)と同時に、革に必要な栄養補給(保革)を行うことができます。
革が健康な状態を取り戻せば、自然な黒さと深みのある艶が復活し、ひび割れなどのトラブルも未然に防ぐことができます。
表面をペンキのように塗りつぶして質感を殺してしまうのではなく、革本来の風合いを生かしたまま黒さを復活させたい場合は、この乳化性クリームを使ったケアが基本であり、王道のアプローチとなります。
100均で革靴を黒に染める具体的な手順と注意点

ここからは、100均アイテムを使って実際に革靴を「黒く染める(塗装する)」ための、より実践的かつ具体的なテクニックを解説します。
特に、アクリル絵の具を使った方法は、茶色の靴を黒くカラーチェンジしたり、広範囲の深い傷を隠したりするのに非常に有効なDIYリペア術です。失敗を防ぐための細かいコツも交えて紹介します。
黒染めのやり方と必要な準備物
アクリル絵の具を使って、低コストで革靴を黒くリメイクするために必要な道具リストです。
これらはすべてダイソーやセリアの文具コーナー、DIYコーナー、およびコスメコーナー(除光液)で揃えることができます。総額でも500円〜800円程度で収まるはずです。
| アイテム名 | 用途・役割・選び方のコツ |
|---|---|
| アクリル絵の具(黒) | メインの塗料です。必ず「アクリル」と書かれたものを選んでください。水彩絵の具は耐水性がないため不可です。より黒を深くしたい場合は、ごく少量の「紺色」や「焦げ茶」を混ぜると深みが出ます。 |
| 筆(平筆・細筆) | 広い面(アッパー全体)を塗るための平筆と、細かい隙間やコバ(靴のふち)を塗るための細筆の2種類を用意すると作業効率が格段に上がります。 |
| メラミンスポンジ | 塗装前の下地処理(足付け)に使用します。「激落ちくん」などの類似品で構いません。革の表面を物理的に研磨するために使います。 |
| 除光液(リムーバー) | 革表面に残っている古いワックスやクリーム、油分を完全に除去するために使います。アセトン入りが強力ですが、革への負担を考えるならノンアセトンでも可です。 |
| 水性ニス / デコパージュ液 | 塗装後の保護と艶出し(トップコート)に使います。これがなければ、塗装がすぐに剥がれたり、雨でベタついたりします。必須アイテムです。 |
塗装前の足付けと汚れ落とし手順
塗装(黒染め)を成功させるか、失敗してボロボロと剥がれてくるかの分かれ道は、実は「塗る作業」そのものではなく、その前段階である「下地処理」にあります。
多くの失敗例は、この工程を省いたことによる「定着不良」が原因です。革靴の表面には、製造時に塗られた仕上げ剤や、日々の手入れで塗り重ねられたクリーム、ワックス、そして手垢などの油分が強固に付着しています。
これらが残った状態で絵の具を塗っても、油が水を弾くように絵の具を弾いてしまい、全く定着しません。
手順1:徹底的な汚れ落とし(脱脂)
まず靴紐を全て外し、ブラシで埃を落とします。次に、除光液を布にたっぷりと含ませ、靴の表面を拭き取ります。おそらく布が茶色や黒のクリームで汚れるはずです。
布の綺麗な面を変えながら、色が移らなくなるまで徹底的に古いクリームを落としてください。この作業で革の「すっぴん」状態を作ります。
手順2:足付け(やすり掛け)
脱脂が終わったら、メラミンスポンジ(または目の細かいサンドペーパー)を使って、革の表面全体を軽くこすります。これを専門用語で「足付け」と呼びます。
ツルツルした革の表面に、目に見えないレベルの微細な傷をつけることで、表面積を増やし、絵の具が食いつくための「取っ掛かり(アンカー)」を作ります。この工程を行うことで、塗装の密着力(剥がれにくさ)が飛躍的に向上します。
注意点
除光液やメラミンスポンジを使うと、革の表面の艶はなくなり、カサカサとした荒れた状態になります。非常に不安になるかもしれませんが、これは塗装を定着させるために必要な「下地作り」の工程ですので安心してください。
ただし、高級な靴やデリケートな革で行う場合は、リスクが高いため、必ず目立たない場所(ベロの端など)でテストしてから行ってください。
ムラを防ぐアクリル絵の具の塗り方

下地処理が完了したら、いよいよ塗装に入ります。ここでプロ並みの仕上がりを目指すための鉄則は、「薄く、何度も重ねる(レイヤリング)」ことです。
初心者が陥りやすいミスは、一度で真っ黒に染めようとして、濃い絵の具を分厚く塗ってしまうことです。厚塗りは乾燥ムラの原因になるだけでなく、乾いた後に厚いプラスチックの層となり、歩行時の屈曲に耐えられずにすぐに「バリッ」と割れてしまいます。
具体的な手順は以下の通りです。
まず、アクリル絵の具をパレット(牛乳パックや紙皿で代用可)に出し、水で希釈します。比率の目安は「絵の具10に対して水2〜3」程度です。
ポタージュスープより少し緩いくらいの粘度が理想です。水が多すぎると革の上で弾いてしまい、少なすぎると筆跡が残ってしまいます。
この薄めた絵の具を、筆で薄く塗り広げます。1回目は色が透けてムラになっても気にしないでください。一度全体を塗り終えたら、ドライヤーの温風を当てて完全に乾燥させます。
乾いたら2回目、また乾かして3回目と塗り重ねていきます。通常、3回〜4回の重ね塗りで、下の色は完全に見えなくなり、ムラのない均一で美しい黒色に仕上がります。
また、筆で塗るのではなく、食器用スポンジの切れ端に絵の具を含ませ、ポンポンと叩くように色を乗せる「パッティング」という技法を使うと、筆跡がつかず、革特有のシボ感(表面の凹凸)を潰さずに自然な風合いに仕上げることができます。
仕上げのニスで耐久性を高める
アクリル絵の具が完全に乾いて黒くなったとしても、それで完成ではありません。この状態では、表面はまだ摩擦に弱く、雨に濡れると少しベタついたり、水を含んでふやけたりする可能性があります。
また、衣服や靴下に色が移るリスクも高い状態です。そこで必ず必要になるのが、塗装面を保護するための「トップコート(オーバーコート)」の工程です。
セリアやダイソーのDIYコーナーで売られている「水性ニス」または「デコパージュ専用液」を用意してください。これらを筆に取り、塗装した黒い部分の上に薄く均一に塗布します。
これが乾燥すると透明な保護膜となり、アクリル絵の具を外部の刺激から守ってくれます。
ニスには「つや出し(グロス)」と「つや消し(マット)」の2種類があります。
ビジネスシューズのようにピカピカとした光沢が欲しい場合は「つや出し」を、ワークブーツやカジュアルシューズのように落ち着いた質感が好みの場合は「つや消し」を選びましょう。
中間の自然な艶が欲しい場合は、両方を混ぜて使うか、つや出しニスを塗った後に軽くメラミンスポンジで擦って艶を落とすという裏技もあります。
このトップコート処理を行うことで、耐水性と耐久性は格段に上がり、色移りの心配も大幅に軽減されます。
リキッドタイプの使用には注意

100均の靴ケアコーナーには、先端にスポンジがついたボトル入りの液体靴墨、「リキッドタイプ」も販売されています。
キャップを開けて塗るだけで、手も汚れず、瞬時にピカピカの光沢が出るため、忙しい朝や出先でのケアには非常に便利なアイテムです。しかし、長期的な視点で革靴を大切にしたいのであれば、このリキッドタイプの常用には注意が必要です。
多くの安価なリキッド靴墨には、光沢を出すための主成分として「シリコン樹脂」などが含まれています。シリコンは塗布すると革の表面に強力で均一な被膜を形成し、美しいツヤと撥水効果をもたらします。
しかし、この被膜は革の「呼吸」を止めてしまう副作用があります。革の毛穴がシリコンで塞がれると、内部の湿気が逃げられなくなり、蒸れの原因になります。
さらに深刻な問題は、シリコンの被膜が強力すぎて、後から塗る「栄養クリーム」の浸透を完全にブロックしてしまうことです。シリコン層が厚く蓄積された状態でいくら高級なクリームを塗っても、油分も水分も革の内部には届きません。
結果として、革は表面だけピカピカなのに内部はカラカラに乾燥し、ある日突然、深いひび割れ(クラック)が発生して寿命を迎えてしまいます。
リキッドタイプは「どうしても時間がない時の緊急用」として割り切り、普段は乳化性クリームを使う、あるいは数回に一度は強力なクリーナーでシリコン膜を完全に除去する「リセット」を行うことが推奨されます。
シリコン除去の難易度
一度シリコンでガチガチにコーティングされた靴は、通常のクリーナーではなかなか落ちないことがあります。その場合、今回の塗装手順でも紹介した「除光液」や強力なステインリムーバーが必要になることもあります。
100均で革靴の黒染めは可能か
結論として、100均のアイテムを使って革靴を黒く染めたり、傷を補修したりすることは十分に可能です。
特に今回詳しく解説した「アクリル絵の具」を用いた方法は、数百円というコストで、捨てようか迷っていた靴を見違えるように復活させることができる、非常にコストパフォーマンスに優れたDIYリペア術と言えるでしょう。
しかし、忘れてはならないのは、これらはあくまで「顔料による表面的な塗装」であり、革の内部まで染料を浸透させるプロの「染め替え」とは根本的に異なるということです。
塗装によって革本来の柔らかい風合いや通気性は多少なりとも損なわれますし、履きジワ部分からの塗膜剥離やひび割れのリスクもゼロではありません。
「もう捨てようか迷っている作業用の靴」や「リサイクルショップで安く手に入れた中古靴」を再生させるための手段としては非常に有効で楽しめますが、
数万円するような高級なブランド革靴や、一生モノとして大切に育てていきたい一足の場合は、リスクを避けるためにも、専門の修理店に依頼するか、サフィールやコロンブスといった信頼できるシューケア専門メーカーの製品を使用することを強くおすすめします。
まとめ
- 日常のケアと軽い補色ならダイソーの乳化性クリーム。
- 茶色からのカラーチェンジや深い傷隠しならセリアのアクリル絵の具。
- 急な傷隠しにはキャンドゥの補修ペン。
- 油性マジックとシリコン入りリキッドの常用は避ける。