
こんにちは。レザーソールズ運営者のCROSSです。
スペインの実力派ブランドであるバーウィック(Berwick 1707)のローファー、その堅牢な作りとコストパフォーマンス、そして何より美しいデザインから非常に人気がありますね。
しかし、いざ購入しようと思ったときに最も悩ましいのが「サイズ選び」ではないでしょうか。
特にローファーは紐靴と違って調整が効かないため、サイズ選びの難易度が極めて高い靴です。ネット上の口コミを見ても「きつい」「踵が抜ける」「痛くて歩けない」といった声が混在しており、一体どれを信じればいいのか迷ってしまう方も多いはずです。
私自身も過去にサイズ選びで失敗し、踵がカパカパで歩けない靴を泣く泣く手放した苦い経験があります。
実は、バーウィックのような「グッドイヤーウェルテッド製法」で作られたローファーには、スニーカーとは全く異なる独特のサイズ選びのルールが存在します。
このルールを知らずにいつもの感覚で選んでしまうと、履き込んで革が馴染んだ頃にブカブカになってしまうリスクがあるのです。
今回は、失敗しないためのサイズ感の基準や、主要な木型によるフィッティングの違い、そして購入後の調整方法まで、私の経験と知識を余すことなくお伝えします。
徹底解説!バーウィックローファーのサイズ感と基準

まずは、バーウィックのローファーを選ぶ上で絶対に知っておくべき基礎知識から解説します。
スニーカーとのサイズ表記の決定的な違いや、なぜ最初は「きつい」と感じるサイズを選ぶべきなのか、その明確な理由と基準について詳しく見ていきましょう。
スニーカーサイズとの違いと換算
普段スニーカーを履き慣れている方が本格的な革靴を選ぶ際、最も陥りやすい罠がこの「サイズ換算」です。
結論から言うと、スニーカーと同じサイズでバーウィックを選ぶと、ほぼ間違いなく大きすぎて失敗します。
これには明確な理由があります。
Nike(ナイキ)、New Balance(ニューバランス)、Adidas(アディダス)といった主要なスニーカーブランドのサイズ表記(cm)は、靴自体の設計寸やデザイン寸を含んでいることが多く、実際の「足の大きさ」よりも1.0cmから2.0cmほど大きな数値になっていることが一般的です。
スニーカーは足全体をクッションで包み込む構造のため、多少大きくても紐で締めれば快適に履けるからです。
一方で、バーウィックのような革靴は「足の実寸(足長)」に近いサイズで作られています。加えて、ローファーは紐がないため、足を靴の中で固定するためにタイトな設計が求められます。
推奨されるサイズダウンの目安 スニーカーサイズから最低でも1.0cm、基本的には1.5cm〜2.0cmサイズを下げて選ぶのが鉄則です。 例:スニーカーで27.5cmを履いている場合 → バーウィックでは26.0cm相当(UK 7.0〜7.5)が適正範囲となります。
「そんなに小さくて足が入るの?」と不安になるかもしれませんが、これが革靴における適正なサイズ感のスタートラインなのです。まずはこのギャップを理解することが第一歩です。
公式UKサイズ表とcmの目安
バーウィックはイギリスの伝統的な「UKサイズ」表記を採用しています。日本の靴(cm表記)に慣れていると少し分かりにくいですが、おおよその目安を知っておくことで迷いを減らせます。
一般的に、UKサイズに「8.5」を足した数字が日本サイズ(cm)に近いと言われていますが、これはあくまで単純な計算式に過ぎません。実際には、自分の足の実寸を基準に、以下のような換算イメージを持つと良いでしょう。
| 足の実寸 (cm) | バーウィック UKサイズ | 普段のスニーカー 目安 (cm) |
|---|---|---|
| 25.0 | 6.0 - 6.5 | 26.5 - 27.0 |
| 25.5 | 6.5 - 7.0 | 27.0 - 27.5 |
| 26.0 | 7.0 - 7.5 | 27.5 - 28.0 |
| 26.5 | 7.5 - 8.0 | 28.0 - 28.5 |
| 27.0 | 8.0 - 8.5 | 28.5 - 29.0 |
注意点 上記の表はあくまで目安です。同じUKサイズでも、後述する「木型(ラスト)」によって体感サイズ(特に幅や甲の高さ)は大きく変わります。必ず実寸を基準に考えてください。
足の実寸を測る際は、壁に踵をつけ、一番長い指の先までの長さを定規で測ってみてください。
意外と自分の足を「27cmだ」と思い込んでいるだけで、実寸は「25.5cm」しかない、なんてことも珍しくありません。
最初はきついのが正解な理由

店頭や自宅で試着した瞬間に「あれ、ちょっときついかも…」「圧迫感が強いな」と感じると、どうしてもサイズを上げたくなりますよね。
ですが、バーウィックのローファーに関しては、その初期の「きつさ」こそが正解である場合がほとんどです。
その理由は、バーウィックが得意とする「グッドイヤーウェルテッド製法」の構造的特徴にあります。
1. コルクの沈み込み
この製法の靴は、中底の下にたっぷりと練りコルクが敷き詰められています。履き込むうちに、体重と熱によってこのコルクが圧縮され、持ち主の足の形に合わせて沈み込みます。
この沈み込みにより、靴内部の容積が広がり、インソールが足裏に吸い付くような「自分だけの形」に変形します。
2. 革の伸び(ストレッチ)
アッパーに使用されている革(特に甲の部分)は、歩行時の屈曲によって徐々に伸びて馴染みます。特に幅(ボールジョイント)方向への伸びは顕著です。
つまり、新品の状態で「どこも当たらなくて快適」なサイズを選んでしまうと、数ヶ月後にはコルクが沈んで革が伸び、結果として「ゆるくて踵が抜ける靴」になってしまうのです。ローファーで踵が抜けると、歩きにくいだけでなく靴擦れの原因にもなります。
許容できるきつさの基準 ・靴べらを使わないと足が入らない ・甲全体がギュッと強く握手されているような圧迫感がある ・親指や小指の付け根(ボールジョイント)が横から押されている NGなきつさ ・足を入れた瞬間から痺れを感じる ・指が中で折れ曲がって伸びない ・踵の骨に食い込んで激痛が走る
初期のタイトさは、将来的に訪れる「極上のフィット感」を得るための投資だと考えてください。修行期間を乗り越えた先には、スニーカーでは味わえない一体感が待っています。
木型171とHO156の特徴
バーウィックのローファー選びで非常に重要なのが、「木型(ラスト)」の違いです。同じ「UK 7.0」というサイズ表記でも、木型が違えば履き心地やサイズ感は全く別物になります。
ここでは、バーウィックのローファーで採用されている代表的な2つの木型について詳しく解説します。
木型 HO156 (HO156 Last)
バーウィックのローファーラインナップにおいて、最もスタンダードかつ広く採用されている木型です。つま先が適度に丸みを帯びたラウンドトウで、ビジネススーツからデニムスタイルのカジュアルまで幅広く対応できる汎用性の高さが魅力です。
特徴は「バランスの良さと快適性」です。幅や甲の高さが標準的なEワイズ(英国基準)相当で作られており、比較的癖のないフィッティングです。
初めてバーウィックを買う方や、特定の部分が痛くなるのを避けたい「コンフォート重視」の方は、まずこの木型を基準にすると良いでしょう。公式オンラインストア等でも多くの定番モデルに採用されています。
木型 171 (171 Last)
HO156に比べて、よりシャープでモダン、そしてエレガントな印象を持つ木型です。ノーズ(甲からつま先までの長さ)が少し長く設計されており、ドレッシーなスタイルに非常にマッチします。
サイズ選びで重要なのは、HO156よりも全体的にタイトな設計であるという点です。体積が小さく、特につま先にかけての絞り込みが強く、甲の高さも低めに設定されています。
そのため、HO156と同じサイズを選ぶと「かなりきつい」「甲が入らない」と感じる可能性が高いです。
ご自身が欲しいモデルがどの木型を使っているか、製品ページで必ず確認するようにしましょう。型番だけでなくラスト(Last)の情報を見ることが失敗を防ぐ鍵です。
甲高幅広な日本人の選び方

私たち日本人の足の特徴としてよく挙げられるのが「甲高・幅広」です。
欧州ブランドであるバーウィックの標準的な木型は、欧米人の「甲が低く幅が狭い」足を基準にしていることが多いため、どうしてもミスマッチが起こりやすいのが現実です。
特にローファーは紐で調整できないため、「長さ(捨て寸)よりも甲のホールド感を最優先する」というフィッティング哲学が極めて重要になります。
よくある失敗例として、甲が高い方が無理に甲の圧迫を避けようとしてサイズアップをしてしまうケースがあります。これをすると、今度はつま先(捨て寸)が余りすぎてしまい、踵に指が入るほどの隙間ができてしまいます。結果、歩くたびに踵が抜け、靴擦れを起こします。
日本人のための選び方ポイント
- 甲高の方への推奨: まずは体積に余裕がある「HO156」ラストを選ぶのが無難です。デザイン重視で171ラストを選ぶ場合は、ハーフサイズアップを検討し、踵が抜けるようなら調整材で対応する覚悟が必要です。
- 幅広の方への推奨: 横幅(ボールジョイント)のきつさは、革が伸びて最も馴染みやすい部分です。「幅がきついから」という理由だけで安易にサイズアップせず、ある程度の圧迫感は我慢してジャストサイズ(長さが合っているサイズ)を維持することをおすすめします。
「痛いのは嫌だ」という気持ちは痛いほど分かりますが、ローファーに関しては「最初は修行」と言われるほど、初期のフィット感がシビアであることを覚えておいてください。
自分の足の特徴に合わせて、木型とサイズを慎重に選びましょう。
バーウィックローファーのサイズ感比較と調整ガイド

ここでは、購入時によく比較検討される他ブランドとのサイズ感の違いや、万が一サイズ選びに失敗してしまった場合、あるいは馴染ませる過程で痛みが強い場合の具体的な対処法について解説します。
ジャランスリウァヤとサイズ比較

同じ価格帯で、同じくグッドイヤーウェルテッド製法を採用している人気ブランド「ジャランスリウァヤ(Jalan Sriwijaya)」。コスパの良い革靴として比較されることが多いですが、サイズ感には明確な違いがあります。
一般的に、ジャランスリウァヤの方が全体的にタイトで、特に甲が低く設定されている傾向にあります。
代表的なローファーモデル「98589」などは、ヒールカップが小さく甲の抑えが効いているため、非常にフィット感が良い反面、甲高の人には厳しいサイズ感となりがちです。
対してバーウィック(特にHO156ラスト)は、ジャランスリウァヤに比べるとわずかに体積にゆとりがあり、ボールジョイント周りも少し楽に感じることが多いです。
サイズ移行の目安 もしあなたがジャランスリウァヤで「UK 7.0」をジャストで履いているなら、バーウィックでも同じ「UK 7.0」を選んで問題ないケースが多いでしょう。 逆に、「ジャランスリウァヤはきつすぎて断念した」「甲が当たって痛かった」という幅広・甲高の方にとっては、バーウィックの方が足に合いやすく、快適に履ける可能性が高いです。
スコッチグレイン等との違い

日本のブランド、特に「スコッチグレイン」や「リーガル」から乗り換える場合は要注意です。
これらの国産ブランドは、日本人の足に合わせて「EEE(3E)」などの幅広ワイズを標準としていることが多く、靴内部の空間が非常に広く作られています。
例えば、スコッチグレインの26.0cm(EEE)と、バーウィックのUK 7.5(約26.0cm相当)を比較すると、バーウィックの方が圧倒的に幅が狭く、甲も低く感じます。同じ「26cm」という数字でも、体感サイズは0.5cm〜1.0cmほど違うと感じるかもしれません。
乗り換え時の注意 国産EEEワイズに慣れている方が同じ感覚でバーウィック(Eワイズ相当)を選ぶと、足が入らないことさえあります。国産ブランドからの移行であれば、ハーフサイズ(0.5cm相当)〜ワンサイズアップも視野に入れて検討する必要があります。
「日本サイズで26cmだから」と安易に判断せず、自分が普段履いている靴のワイズ(幅)がどうなのかを意識し、試着の際は「最初は入らなくて当然」くらいの気持ちで臨むのが失敗を防ぐコツです。
踵が抜ける場合の調整方法
「サイズを選んだつもりだけど、いざ歩いてみると踵が浮いてしまう…」 ローファーにおいて最も多い悩みがこれです。
しかし、絶望する必要はありません。適切な調整グッズを使えば、劇的に改善することができます。インソールを入れるだけが調整ではありません。
最もおすすめなのが「タンパッド」です。
これは靴の甲の裏側(タンの裏)に貼るクッションパッドのことです。
「踵が抜けるなら踵にパッドを貼るべきでは?」と思うかもしれませんが、実は逆効果になることがあります。ローファーの場合は、甲と靴の隙間を埋めて、足を靴の奥(ヒールカップ側)に押し付けることで踵抜けを防ぐ方が、圧倒的に効果的で自然なフィット感が得られます。
| 調整グッズ | 目的・効果 | おすすめ度 |
|---|---|---|
| タンパッド | 甲の隙間を埋め、足をヒールカップに固定する。外見に影響しない。 | ★★★(最優先) |
| ハーフインソール | つま先側の体積を減らし、フィット感を高める。指の当たりに注意。 | ★★☆ |
| ヒールストッパー | 踵の内側に貼り、摩擦で抜けを防ぐ。靴擦れ防止にもなる。 | ★☆☆(最終手段) |
まずは薄いタンパッド(1mm〜2mm程度)から試して、甲のホールド感を高めることから始めてみてください。これだけで踵がついてくるようになるケースは非常に多いです。
痛い時の馴染ませ方と期間
新品のバーウィックを下ろした直後は、どうしても足が痛くなることがあります。これを「ブレイクイン(履き慣らし)」の期間と呼びますが、無理は禁物です。
一般的に、グッドイヤーウェルテッド製法の靴が足に馴染むまでには、10回〜15回の着用、時間にして30〜50時間程度が必要だと言われています。バーウィックの革は堅牢である分、馴染むまでに少し時間がかかる傾向があります(出典:Berwick1707 公式サイト)。
最初のうちは、一日中歩き回るような日には履かないようにしましょう。近所のコンビニに行くときや、通勤の片道だけ履いて会社で履き替えるなど、短時間の着用を繰り返すのがコツです。
また、厚手の靴下を履いて家の中で過ごす「室内履き」も、革を体温で温めながらじんわり伸ばせるので、痛みを最小限に抑える非常に有効な手段です。
痛いからといってすぐに諦めず、「この痛みは靴が自分の足型を覚えている途中なんだ」と捉えて、少しずつ育てていく感覚を楽しんでください。
失敗しないバーウィックローファーのサイズ感総括
最後に、バーウィックのローファー選びで失敗しないための要点をまとめます。
バーウィック ローファーのサイズ感において最も重要なのは、「現在の快適さ」ではなく「未来のフィット感」を見据えて選ぶことです。スニーカーサイズから1.5cm〜2.0cmダウンさせ、新品時は「甲と幅がしっかりホールドされている(少しきつい)」状態を目指しましょう。
購入前の最終チェックリスト
- スニーカーサイズからしっかりサイズダウンしたか?(実寸に近いサイズか)
- 木型(HO156か171か)の特徴を理解し、自分の足型に合わせているか?
- 踵が大きく浮かないか?(0.5cm以内の浮きなら許容範囲、それ以上は危険)
- 甲の圧迫感はあるか?(ここが緩いと後で絶対に後悔します)
オンラインで購入する場合でも、これらの基準をしっかり持っていれば、大きな失敗は防げます。
もしサイズが合わなかった場合も、タンパッドなどの調整ツールを駆使すれば、自分だけの快適な一足に仕上げることができますよ。
あなたのバーウィック選びが成功し、長く愛用できる最高の相棒となることを願っています。それでは、また次の記事でお会いしましょう!