ローファー 用途・シーン

葬式にローファーはNG?男性の靴マナー

葬式 ローファー 男性

こんにちは。レザーソールズ:ローファー・革靴・スリッポン選び方ガイドです。

突然の訃報に接したとき、まず頭をよぎるのは故人への想いですが、その次に現実的な問題として「何を着ていけばいいんだっけ?」と焦ってしまうこと、ありますよね。

特に足元。

「葬式にローファーを履いていってもいいんだろうか?」と迷う男性は、実はとても多いんじゃないかなと思います。

私自身、靴が好きで普段からローファーを愛用している分、余計にその境界線が気になってしまうタイプです。

ローファーは脱ぎ履きが楽なスリッポンの一種ですが、デザインによってはビット(金具)が付いていたり、タッセル(房飾り)が付いていたりと様々です。

「紐がないからカジュアルすぎるかな?」「お通夜なら急だし許容される?」それとも「学生時代はローファーだったけど大人はダメ?」など、考え出すと不安の種は尽きません。

この記事では、そんな「葬式とローファー」にまつわる男性のマナーの疑問を解消し、いざという時にローファーしかない場合の現実的な対処法まで、詳しく深掘りしてまとめていこうと思います。

この記事のポイント

  • 葬式でローファーがなぜマナー違反とされるのかの理由
  • ビットやタッセルなどデザインごとの詳細なOK・NG基準
  • お通夜や学生の参列など状況に応じた判断ポイント
  • 葬式に本当にふさわしい男性の革靴と足元の正解

葬式にローファー、男性はNG?

葬式 ローファー 男性

まず結論から申し上げますと、大人の男性が葬式の場でローファーを履くことは、原則としてマナー違反となります。

なぜそこまで厳しく見られるのか、その理由やデザイン別の違いについて、少し専門的な視点も交えて見ていきましょう。

葬式とスリッポンの関係性

まず大前提として押さえておきたいのは、ローファーは「紐のない靴(スリッポン)」の一種だということです。

葬儀(お通夜や告別式)は、故人様と最後のお別れをする場であり、人生儀礼の中でも最も格式高い(フォーマルな)儀式の一つです。

こうした場で参列者に求められるのは、故人およびご遺族に対する最大限の敬意や弔意を示す服装です。そして、洋装における足元のマナーには厳格なランク付けが存在します。

フォーマルな場での紳士靴は、「紐付き(レースアップ)」であることが世界共通の基本ルールとされています。

靴紐をしっかりと結んで儀式に臨むことが「身を引き締める」という精神性にもつながるためです。そのため、紐のないスリッポンやローファーは、その構造自体が「リラックスした履物」=「カジュアル」と見なされてしまうんですね。

たとえ黒くてシンプルなデザインであっても、「紐がない」という一点だけで、フォーマルな場ではランクが下がってしまうのが現実です。

ビットローファーはNGか

葬式 ローファー 男性

数あるローファーの種類の中でも、特に葬儀で絶対に避けるべきなのが「ビットローファー」です。

ビットローファーは、甲の部分にホースビットと呼ばれる金属製の金具が付いているのが特徴ですよね。グッチなどが有名で非常にファッショナブルな靴ですが、これが葬儀の場では完全にNGとされています。

光り物は厳禁です

葬儀のマナーにおいて、結婚指輪以外のアクセサリー類、特に「光り物」はタブーとされています。キラキラと光を反射するものは「華美」であり、お祝いの場やパーティーを連想させてしまうためです。

ビットローファーの金具は、ゴールドであれシルバーであれ、まさにこの「光り物」に該当します。足元で金具がカチャカチャと音を立てたり、光を反射したりすることは、厳粛な場において非常に不謹慎と見なされてしまうんですね。

デザイン的にも非常に主張が強いため、ローファーの中でも「最も葬儀にふさわしくないタイプ」と言えるかなと思います。

タッセルローファーの扱い

葬式 ローファー 男性

では、甲に房飾り(タッセル)が付いた「タッセルローファー」はどうでしょうか。金具が付いていないタイプも多いので、「これなら大丈夫では?」と思う方もいるかもしれません。

しかし、これも結論としては、避けるべきです。

葬儀用の靴の鉄則は、「シンプルで装飾のないこと」です。タッセルは金属ではありませんが、靴の機能としては不要な、純粋な「装飾」です。歩くたびに揺れる房飾りは、どうしても華美で軽快な印象を与えてしまいます。

ビジネスシーンやカジュアルなパーティーでは「弁護士の靴」とも呼ばれ、知的で上品なイメージのあるタッセルローファーですが、弔事の場においてはその装飾性が仇となり、不適切と判断されるのが一般的です。

ローファーの語源を知っていますか?

ちょっとした豆知識ですが、ローファー(Loafer)という言葉には、英語で「怠け者」という意味があるんです。靴紐を結ぶ手間がいらず、手を使わずに簡単に脱ぎ履きできる(=怠け者が履く靴)というのが由来の一つとされています。

この「怠ける」や「楽をする」というルーツが、故人を偲び、礼節を重んじて厳粛に振る舞うべき葬儀の精神性と真逆にあるため、最も忌避されるという説もあるんですよ。言葉の背景を知ると、なぜNGなのかがより深く理解できますよね。

お通夜ならローファーは許容?

よく「お通夜は急いで駆け付けるものだから、服装のマナーも少し緩和される」と聞いたことがありませんか?

確かに昔からの慣習として、突然の訃報を受けて仕事先などから駆け付ける場合、完全な喪服(ブラックスーツ)ではなく、地味な平服(ダークスーツ)での参列が許容されることはあります。

しかし、だからといって靴のマナーまで大幅に緩和されると考えるのは少し危険かなと思います。

現代のお通夜は、告別式に出席できない方が最後のお別れをする場としての機能も強まっており、遺族や親族は喪服を着用しています。

また、多くの参列者が一度帰宅して着替えてくるケースも増えています。

お通夜であっても、ローファーやスニーカーが「マナー違反」と見なされるリスクは、告別式とほとんど変わりません。

特にご年配の方や、マナーに厳しい方は足元をよく見ています。無用な誤解を避け、遺族に失礼のないようにするためにも、お通夜であってもローファーでの参列は避けるのが無難です。

学生がローファーで参列する場合

ここまで「ローファーはNG」と厳しくお話ししてきましたが、明確な例外が一つだけあります。それは、参列者が「学生(子供)」である場合です。

未成年の学生や子供には、大人のような厳格なビジネスマナーや喪服のルールは求められません。

制服がある場合は、それが正装です

もし学校指定の制服があるなら、それが学生にとっての最もフォーマルな礼服(正装)となります。ここが重要なポイントです。

その際、学校指定の靴がローファー(黒やこげ茶のコインローファーなど)であれば、それを履いて参列するのが正しいマナーです。

この場合、ローファーであることは全く問題になりません。むしろ、無理に慣れない紐靴を用意するよりも、制服として指定された靴を履く方が自然で礼に適っています。

制服がない場合や、小学生以下の小さなお子様の場合も、黒や紺、ダークブラウンなどの暗い色であれば、スニーカーでも問題ないとされています。

ただし、キャラクターが描かれたものや、歩くとピカピカ光るギミックのある靴、派手な原色の靴などは、場の雰囲気を壊してしまうため避けましょう。

葬式とローファー、男性のマナー

葬式 ローファー 男性
John Lobb公式サイトより引用

ローファーがなぜNGなのか、その背景はご理解いただけたかと思います。

では、ここからは視点を変えて、「じゃあ、具体的に何を履けばいいの?」という疑問にお答えします。葬儀における男性の足元のマナー、その「正解」を詳しくチェックしていきましょう。

葬式での男性の靴マナーとは

葬儀に参列する際の靴選びには、絶対に守るべき基本ルールがいくつか存在します。

複雑に感じるかもしれませんが、以下の表の基準を満たしているかどうかが判断の分かれ目になります。

項目最適 (Best)許容 (OK)マナー違反 (NG)
-茶、紺、グレー、バイカラーなど黒以外
デザイン内羽根ストレートチッププレーントゥ、外羽根式(シンプル)ローファー、ウィングチップ、Uチップ
素材本革、合成皮革布製(光沢なし)エナメル、スエード、アニマル革
装飾なしなし金具、タッセル、メダリオン(穴飾り)

特に色は「黒一択」です。ビジネスシューズではダークブラウンもおしゃれですが、葬儀では「喪に服する」という意味合いからも、黒以外の色はマナー違反となります。

素材に関しては、本革(天然皮革)または合成皮革が基本です。「本革は殺生を連想させるのでは?」と気にする方もいますが、スムースレザー(滑らかな革)であれば現代のマナーでは全く問題ありません。

「殺生」を連想させる素材は厳禁

ただし、本革の中でも明らかに動物の姿を連想させるものはNGです。

ワニ革(クロコダイル)、ヘビ革(パイソン)、トカゲ革(リザード)などのエキゾチックレザーや、それらを模した型押しの革靴は、「殺生」のイメージが強すぎるため、仏教の教えの観点からも最大のタブーとされています。

また、エナメル(パテントレザー)のようなピカピカした光沢素材もNGです。手入れされた革の自然な艶は美しいですが、エナメルのような人工的な強い光沢は「華美」と判断されます。

葬式でNGとされる男性の靴

ローファー以外にも、葬儀で履いてはいけない靴は意外とたくさんあります。

ご自身の靴箱にある靴が該当していないか、確認してみてください。

  • ウィングチップ つま先に「W」の字型の切り替えがあり、多くの場合はメダリオン(穴飾り)が施されている靴です。クラシックで素敵ですが、装飾性が高すぎるため、弔事には不向きです。
  • Uチップ、スワールモカ 甲の部分に「U」の字型のステッチが入っていたり、つま先に向かって2本のラインが伸びているデザインです。これらはビジネスやカジュアル向けの意匠と見なされるため、厳格な場では避けるべきです。
  • スニーカー、ブーツ、サンダル これは言うまでもありませんが、紐付きであってもスニーカーやハイカットのブーツ、肌の露出があるサンダルなどは、ラフな格好と見なされるため論外です。
  • モンクストラップ(金具付き) 紐の代わりにベルトとバックル(金具)で固定するタイプの靴です。ビジネスでは許容されますが、葬儀では「金具=光り物」が付いているため、原則として避けたほうが無難です(※金具が目立たない黒で、シングルモンクなら許容されるという説もありますが、あえて選ぶ必要はありません)。

葬式にふさわしい男性の革靴

葬式 ローファー 男性

「あれもダメ、これもダメ」と言われると困ってしまいますよね。では、何が「正解」なのか。

葬儀という場で最も格式が高く、誰からも後ろ指を指されない「最適解」は以下のデザインです。

最適解:黒の内羽根式ストレートチップ

これさえ覚えておけば間違いありません。「黒色」「内羽根式(うちばねしき)」のデザイン、そしてつま先に一本線の入った「ストレートチップ」の革靴です。

内羽根式(バルモラル)とは?

靴紐を通す「羽根」と呼ばれるパーツが、靴の甲(アッパー)の内側に縫い込まれている、または一体化しているデザインのことです。

紐を解いても羽根が全開にならず、見た目が非常にスッキリとしていて品があります。これが最もフォーマルで格式高いスタイルとされています。

(対して、羽根が甲の外側に縫い付けられていてパカパカと開くのが「外羽根式(ダービー)」です。着脱が楽で機能的ですが、ルーツが軍靴や狩猟靴にあるため、内羽根式よりは少しカジュアルな位置づけになります)

ストレートチップとは?

つま先(トゥ)の部分に、横一文字のステッチ(切り替え)が入ったデザインです。一見すると特徴がないように見えますが、この「無駄のないシンプルさ」こそが、フォーマルな場における美徳とされています。

なお、ストレートチップに次いでフォーマルとされる、つま先にステッチや装飾が一切ない「プレーントゥ」も許容範囲です。

ただし、プレーントゥは外羽根式のものが多く、少しカジュアルに見える場合もあるため、やはり内羽根ストレートチップが最強です。

いろいろな情報があって迷うかもしれませんが、「黒の内羽根ストレートチップ」を一足持っておけば、葬儀だけでなく結婚式やビジネスの重要な商談など、冠婚葬祭すべてに対応できます。

大人の男性の必須アイテムとして、一足用意しておくことを強くおすすめします。

葬式での男性の靴下選び

葬式 ローファー 男性

靴選びが完璧でも、靴下選びで失敗して台無しになってしまうケースは意外と多いんです。

葬儀では、座敷に上がる際など靴を脱ぐ場面も想定されます。足元のマナーは靴下まで含めて完成します。

  • 色:黒無地のみです。靴とスーツに合わせて漆黒を選びます。「色が濃いから」といって紺色(ネイビー)やチャコールグレーを選ぶのはNGです。黒のスーツと並ぶと色の違いがはっきり分かってしまいます。
  • 柄:柄物は一切不可です。ブランドのワンポイント刺繍やロゴ、ストライプやチェック柄はもちろん、一見目立たないリブ(縦の折柄)が太すぎるものも、カジュアルな印象を与えるため避けるのが無難です。完全な無地、もしくは細かいリブ編みを選びましょう。
  • 丈:ここが一番の盲点です。椅子に座った時や足を組んだ時に、スラックスの裾が上がってもスネの肌が見えない十分な長さが必要です。くるぶし丈のソックス(スニーカーソックス)は絶対にNGです。ふくらはぎまで隠れる長さの「ロングホーズ(ハイソックス)」であれば、肌が見える心配がなく最も確実です。

ローファーしかない場合の対処法

ここまで正しいマナーをお伝えしてきましたが、「急な訃報で、手元にローファーしかない!」「今から買いに行く時間もないし、お店も開いていない」という緊急事態も現実にはあり得ますよね。

これはあくまで「ダメージコントロール(被害を最小限に抑える)」ための最終手段であり、決して推奨はしませんが…

もし、やむを得ず手持ちのローファーで参列せざるを得ない場合は、最低限以下の条件を満たしているか確認してください。

  • 色が「黒」であること(茶色は論外です)
  • ビット(金具)やタッセル(房飾り)のような「装飾が一切ない」シンプルなコインローファー(ペニーローファー)であること
  • 素材がエナメルや型押しレザーではない、プレーンな革であること

ただし、これは「派手なスニーカーやサンダルで行くよりはマシ」というレベルの消極的な許容範囲です。

マナーに詳しい方やご年配の方からは、「常識がない人だ」と見なされるリスクを伴うことは、覚悟しておいた方がいいかもしれません。

焼香の際など、足元は意外と注目されるものです。

緊急時の調達方法

もし少しでも時間があるなら、ローファーで参列するリスクを冒すよりも、適切な靴を調達することをおすすめします。

  • 購入する:紳士服専門店(青山、AOKIなど)や量販店、ショッピングモール内の靴屋に行けば、数千円程度のエントリーモデルでも葬儀用のフォーマルシューズ(黒の内羽根ストレートチップ)が必ず置いてあります。
  • レンタルする:礼服(喪服)を持っていない場合、レンタルサービスを利用することもあるでしょう。その際、靴もセットで(あるいは靴単体で)レンタルできる場合があります。
  • 靴下を忘れた場合:靴はあっても、黒無地の靴下がない!という場合。これはコンビニエンスストアで調達するのが一番速いです。主要なコンビニには、ビジネス用の黒無地ソックス(リブソックスなど)が置いてあることが多いです。

葬式でローファー、男性の結論

最後に、この記事の結論をまとめます。

「葬式でローファーを履く」ことは、大人の男性のマナーとして原則NGであり、避けるべき、というのが私の見解です。

その理由は、「怠け者」という語源が示す背景や、靴紐のない「スリッポン」という形状自体がカジュアルであり、故人を偲び、遺族へ弔意を示す厳粛な場にはふさわしくないとされているからです。

もちろん、葬儀において一番大切なのは、形式よりも「故人を悼む気持ち」です。

ですが、その見えない気持ちを、誰にでも伝わる形として表現するのが「マナー」の本質なんだと思います。足元のマナーを守ることは、あなた自身の品格を守るだけでなく、悲しみの中にいるご遺族への静かな配慮にもなります。

いざという時に慌てないよう、この機会に「黒の内羽根ストレートチップ」をクローゼットに一足用意しておいてはいかがでしょうか。それさえあれば、どんな格式の場でも胸を張って参列できる安心感が手に入りますよ。

参考記事

-ローファー, 用途・シーン
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